天職とは
突然だが、最近、転職活動を行なっている。
私は今、いわゆる日系超大企業(メーカー)の研究所に勤めている。具体的に言ってしまうと、自動車だ。
近年では外資メーカーとのアライアンス関係もあり、グローバル化が進んでいる(ということになっている)が、組織体は依然として日経大企業のそれと思って差し支えない。
なぜその大企業を選んだか。
自分は自動車が昔から好きだからだ。
紆余曲折はあれど、就職するまでの人生で、自分なりに「未来の車造りにこう関わりたい」と思い描き、そこから逆算して自身の進路を最適化してきたつもりだ。
だから、今の会社に勤めることは、その最適化の一旦のゴールである。
ここまでの経験を生かして活躍できるかもしれないし、気が変わるかもしれない。気が変わるにしても、長年思い描いていた姿に一度なってみることで、自身の憧れに決着はつけられるだろう。
まさに今、転職活動の最中にいるのは、その「気が変わる」かどうかの境界にいるからだ。
研究所に配属され、私の業務は自動車そのものからはおよそ離れ、将来に向けたコンセプト提案にかなり寄った。
自動車が好きなのに、全然自動車に関われていないじゃないか?そう落ち込むかと思ったが、そんなことはなかった。
むしろ、とても面白いのだ。
それがまた、私を悩ませている。
詳しくは述べないが、近年大盛り上がりを見せている技術を使った研究や、その関連分野の業務に関わるにつれ、その分野で専門性を深めることに興味が湧いた。
そして、それを実現するに適切な場所は、今いる会社ではない。たとえ今いるチームが、就労環境や人間関係まで含めて非常に恵まれていたとしても。
それが転職活動を始めたきっかけだ。
幼い頃からの夢に、そんなに早く決着をつけてしまっていいのか?
経験の浅い自分に市場価値はあるのか?
スキルを高め、成長できることこそが今後を生き抜く上で大切なんじゃないか?
どういうスキルを持った人材でいたいか?
古い組織体の会社に残ること、それ自体が成長を阻害するリスクじゃないか?
そもそも、自分の人生の中で仕事はどれくらい大事か?
色々考えた。
成長できる環境として真っ先に挙がるのが、スタートアップだ。これも、調べたり、面談に行くなどした。
そんな折、「明らかに出世コースの入り口」と目される人事異動の可能性まで示唆された。
こういう刺激の強い情報は、慎重になるためのいいきっかけだ。
思えば、転職に思い至ったとき、まず頭の中を支配したのは、転職することの妥当性を支持するための理論武装だ。
今の会社よりもっといい場所がある、そういう比較の図式を強固にしようと躍起になっている自分を、ふと一歩引いて眺めてみたら、思うことがあった。
私は、自分に合った外の土俵を探し、移動するというプロセスによって、自己肯定感を高めようとしているだけなんじゃないか?
それ自体が悪いことなのかは分からない。
ただ、少なくともそれは自分のやりたいことではないように思える。
私は、自分という人間が一番うまく活かせる場所で働きたい。いわゆる、天職だ。
自動車が好きなのだから、その好きを活かせる場所がそれなんじゃないかと、ここまでは思っていた。
そして、別のことに興味が湧いてきたのだから、そっちに賭けてみてもいいんじゃないか?と今は思っている。
こう書けばシンプルだ。
しかしこれは、「自分という人間が一番うまく活かせる場所」にたどり着くためには不可欠な「自分という人間」の理解について、まだ表面をなぞっているだけのように感じる。
自分がどういう性質の人間なのか、もう少し深く理解したい。